レッスンWeb発表会-2

Bear’s paw Color Coordinate Lesson
「ぬのいろあわせ」配色レッスン.2
『カーペンターズスターのタペストリー』
WEB発表会
全6作品を展示中です

自分らしさを見つけるための配色レッスン2回目です
みなさんそれぞれ悩みながらも素敵な作品が仕上がりましたので
ぜひごゆっくりご覧下さい
指導・
解説: 高野ますみ


 

 島田 喜恵子

《解  説》
今回は「クラシックな雰囲気のものを作りたい」ということでしたので、そのイメージに沿って布選びを進めました。
初回お持ちいただいた布から、イメージに合う布を抜き出しただけでも、かなり良い感じに進むという予想はありましたが、2回目裁断した布を並べていただいた際には、思わずうなるほど、喜恵子さんのスキルの高さに感心させられました。
グレー、ブルーグリーン、赤。
「クラシック」が、布の色味やムードでしっかり表現されているのはもちろん、額縁のひとつ手前の部分、白と赤の布が全部で4種類も使われています。これは、すでにそうなっているとサラッと見過ごしてしまいそうな事ですが、本来同じ布で行けそうな部分を複数の物に違和感なく置き換えるのはとても難しいテクニックです。それが出来る条件として、まずは大量の布を持っていること、そしてその中から同じ要素をもつ布を見分ける力があること。やはり長年キルトを作り続けている喜恵子さんだからこそ出来たこの複雑な美しさ。レトロで大人っぽく、エレガントな作品です。
「もう飾る場所も決めてあるんです」と始める前からイメージが揺らぐことがありませんでした。ご本人は「布選びに苦労した」とのご感想でしたが、イメージが明確で、不要なものを排除するのが楽だったことから、その苦労も秘かに楽しんでおられたようです。
実物にはお花の形のキルティングが入っていてそれがまた素敵なのですが、写真ではわかりにくくご覧いただけないのがとても残念です。


表13柄使用/↑裏布/キルト糸「グレー」


片野 のぞみ

《解  説》
お嬢様の受験が成功し、気持ちが晴れ晴れしているので、「明るいものが作りたい」と始められたこのタペストリー。
出来上がった作品は、本当にそのお気持ちが現れた優しく穏やかなものとなりました。
パープルにイエローを合わせたいというイメージで布選びを始めましたが、最初は少し難航、全体がぼんやりとつながったようで、柄数の割には単純で平板に見えてしまっていました。それを解消すべく、イエローよりさらに明るい白地の布を入れ、パープルの布の配置を移動、淋しくなり過ぎないよう小花プリントを加えて密度を調整していただきました。
結果、優しい色味の中にも確固たる明暗が生まれ、遠くからの見た目もメリハリが出ました。パープルとブルーの混ざり具合も美しいですね。
近くに寄ると、文字の布の方向、ストライプの柄合わせなど、繊細な気遣いがされていて、丁寧に作られた跡が見受けられます。
しかしながら、やはりこの作品の一番の良さは、色や柄の持つ雰囲気から作り手の気持ちが伝わって来る点です。いかにも、心配事から解放されて心が軽くなっているのが出ちゃってます。それを知った上で見ると、さらにこの優しい明るさが愛おしく思えて来ます。
おうちで製作中、いつもは無関心なお嬢様が「それ、お母さんらしいね!」とおっしゃったそうです。それって、最高の褒め言葉ではありませんか。今までは暗い色ばかりになってしまっていたのぞみさんの、新しい扉が開いた作品となりました。


表11柄使用/↑裏布/キルト糸「パープル」


西口 佳子

《解  説》
カワイイもの大好き佳子さん。このタペストリーもそのお好みがきちんと表現されています。前作に続き、「イチゴシリーズ」でしょうか(黄色の実はイチゴのプリント)赤、白、ピンク、イエロー、ブラウン、この大きさの作品にしては色数が多いところを、華やかな額縁の花柄で上手くまとめています。ブラウンの布は、チョコレートを思わせ、スイートな色合いに違和感なく溶け込ませています。そうなると赤が甘酸っぱいベリー、白はホイップクリーム、イエローはスポンジケーキ、全体が美味しそうに見えてくるのは私だけでしょうか?甘い誘惑に負けてしまいそうです。
最初は微妙にバランスがとりづらいこのデザインに困惑し、混沌としてなかなか決められなかった布合わせ。でも、私がいろいろお薦めしてみると、「これがいいです」としっかりご自身の好みを答えられる佳子さん。簡単なことのようですが、とても大事なことです。物作りはあくまで作り手の「好き」でいいのです。自分が何を求めているかがわからなければ始まりません。布選びに苦労するケースは、大抵ここがグラグラです。
この作品は、イメージに合う具体的な布を探すのに時間がかかっただけで、根底に流れているものはしっかりしていました。
それでも、何故か「次はシックで大人っぽいものが作りたい」と現状からの脱却を希望される佳子さんです。私はこのままの路線が自然だと思いますが、作り続けて無理なく内から出てくるものならば、見てみたい気もします。それまでは、このカワイイを忘れないでいて下さい。


表11柄使用/↑裏布/キルト糸「イエロー」


上野 妙子

《解  説》
久々にお会いした妙子さん。グリーンの布をたくさん持ってお越しになりました。イエローと合わせたいとのことで、迷いつつも仮決定。その後かなり悩まれたようで、経過のお写真がメールで送られて来ました。複数裁断した布を、場所を入れ替え、柄を入れ替え、試行錯誤の繰り返しで、目も脳もすっかり疲れ果て、どこがどう変わったか判断できなくなっていらっしゃるようでした。
そんな時は一度離れてみて、目も頭もリフレッシュして、新鮮な気持ちでもう一度トライしてみましょう。
1点しかなかった濃色を2種に増やしてバランスを調整、新しい布も加えて、同系色の中にもメリハリの利いた、この作品が出来上がりました。
遠くから見ると、対角のX状に淡いグリーンの帯があり、その上に正方形が2枚、微妙に透過し合いながら重なっているように見えます。まるでヨーロッパの教会のタイル模様を天井から見下ろしているようで、洗練されたグリーンの魅力が満載です。近くに寄ると、細かい赤やオレンジが気持ちいいアクセントになっています。
ひとつ、裏布選びの時点ではすでに電池切れ、他にも候補があったのに考えるパワーが残っていなかったと残念そうな妙子さん。その心残りは、きっと次に生かされることでしょう。
心地よい疲労感と共に布選びを楽しんで下さり、自身「今まで作った中で一番のお気に入り」となったこのタペストリー、写真撮影しながらその構成の美しさに私もハッとさせられた作品でした。


表12柄使用/↑裏布/キルト糸「イエロー」


高橋 要子

《解  説》
自分で布を選んでキルトを作るのは、これが生まれて初めてという要子さん。勇気を出して、ご参加下さいました。
言われるがまま家にあった布を持参し、初回はまさしく手探り状態。どこにどれを置いたらどうなるのか、まったく想像出来ないままレッスンが終了。多分2回目も、よくわからないまま進んで居られたのかも知れません。それでも、他の方の作品や生地の棚を、キラキラ目を輝かせてご覧になっていたり、私の説明に真剣に耳を傾けて下さったり、早く思い通りのものが作れるようになりたい!という思いがひしひしと伝わって来ました。初めてだけど、きっと大好きなんですね、しかも、手先が器用。「縫うのもすごく苦手なんです・・・」とおっしゃっていたのに、どうしてどうして、シワひとつないシュッとした美しい仕上がりで驚きました。
手探り状態だった布合わせも、出来上がりは何とも可愛いピンクと赤。これが不思議なことに、ポップではない、ちょっと懐かしい感じがするではありませんか。喜恵子さん曰く「ちょっと和風な感じがしますよね」と。
和風?和風・・・言われてみれば、確かに、中原淳一や高橋真琴のレトロな少女イラストの世界、小さい頃大切に集めていた匂いつきの千代紙、そんなのが浮かんで来ました。柄の持つ雰囲気に年齢や性別があるとしたら、ここに使われているものはすべて7歳の少女に統一されていて、例外がひとつもありません。
離れて見ると、角に向かって折り紙のチューリップのような形が見えて来ます。多分、狙ってそうなったのではなさそうですが、結果的にはイメージとピッタリ合致していました。
まだまだ作者自身は模索中で今回はたまたまこうなっちゃったという感じでしょうか・・・でも「すごく楽しかった!」という気持ちが、色や針目からも伝わって来て、本当に可愛らしい1枚です。


表12柄使用/↑裏布/キルト糸「ピンク」


海老原 芳子

《解  説》
初日にお持ち下さった布は、どう見てもこのデザインには不向きそうな大きな文字や極太のストライプ。最初の印象は、前途多難・・・
でも、2回目に並べていただいた布たちは、マジックで書いた落書きがアニメーションのように生き生きと動き出しそうな素敵なものでした。
一目で魅了されて、どこも動かさないように釘を刺し、仕上がりをとても楽しみに待っていました。
使われている布は、どれもみんな単純で子供っぽいのです。でも、組み合わせ、並べ方、そのセンスは決して子供の世界ではなく、キース・へリングやアンディ―・ウォーホールみたいな大人のポップアートを感じさせるのです。
前作もそうだったのですが、芳子さんにはそういう感覚が備わっているようで(ご本人は全く自覚なし)、意表を突かれます。
文字や数字の布を、横向きに使います?私なら絶対に普通に上を向かせてしまい、大して面白くないものを作っていたでしょう。アートっぽく見えるかどうかは、そういう所が鍵なのです。頭が固くて、感覚より常識を優先してしまうと、そういうものは作れません。自由で、破天荒でなければ。
芳子さんの作品は、敢えてこのデザインでなくてもこの雰囲気は出せたのかも知れないけれど、仕上がったものを見てしまうとこれが必然だったかな、と思えて来ます。同じデザインで作っても、誰とも似ていない、みんなそこを目指していますが、一歩先に行かれた感じがします。
忙しい毎日でなかなか仕上げる時間がとれず、前日に徹夜で完成させたのに、楽しくて全然眠くもなく疲れも感じなかったそうです。まさに、そんな圧倒的な熱量を感じる作品です。


表14柄使用/↑裏布/キルト糸「水色」

 


《あとがき》
 今回のデザインは、実は本当のパターン名がよくわからず、比較的似ている
「カーペンターズスター(カーペンターズホイール)」と呼ばせていただきました。
上下左右対称形で、一見布選びは簡単そうに見えますが、
バランスがとりづらく非常に難しいデザインです。

皆さんそこをかなり悩みながらも、ちゃんと完成に漕ぎ着けて下さったので
相当ハードだったろうと、我ながら少し気が引けました。
出来上がりは、個性溢れる素敵な作品に仕上がり

こうしてこのページに展示することが出来てホッとしています。
今回もまた、同じデザインでこれだけ違ったものが出来る驚きと感動で心が震えました。

ご参加の皆様、心よりありがとうご
ざいました
2017年6月 髙野ますみ


 レッスン中の様子などこちらのブログもぜひご覧下さい


レッスン概要
「ぬのいろあわせ」配色レッスン 『カーペンターズスターのタペストリー』

日程:2017年①4月28日(金) ②5月12日(金) ③6月9日(金)
いずれも時間は14:00~16:00の2時間レッスン

講習内容
①トップの布選び 裁断の要点説明など

↓14日間 ご自宅で布を裁断して②にご持参いただきます

②トップの布選び続きと微調整 裏布選び 仕上げまでの要点説明など

↓約30日間 ご自宅で作品を仕上げて③にご持参いただきます

③自己分析や感想などを伺う時間・講評。写真撮影と楽しいお茶とお喋りの時間など
※布選び・カラーコーディネートがメインの内容です。このレッスンでは、縫い方・作り方などの基礎的内容は詳しく講習致しません(途中、必要に応じサポートさせていただきます)


自分にしか出来ない「布選び・色合わせ」を見つけていくトレーニングレッスンの第2回目です。
同じサイズ同じデザインで作ることを通して、なかなか見つけられない「自分らしさ」に辿り着く、貴重な経験が出来るレッスンです。
前回は、ご参加の10名の皆様の素晴らしい作品から、私自身もたくさんの気付きをいただきました。それぞれの個性を目の当たりにすると、「では自分は?」という疑問が湧いてきます。私の個性、私らしさっていったいどんなのだろう・・・
実はその「自分らしさ」は1人で見つけるのは意外と難しいのです。自分が思い込んでいる好きな物、もしかしてそれは本来のものではないかも知れません。
普段は意識しない本当の自分の世界を見つけて、好きになること。それが出来るようになると、作ることがもっともっと楽しく、そして自信をもって選択が出来るようになります。
今回選んだカーペンターズスターを応用したデザインは、正方形と直角三角形だけのシンプルな構成にも係らず、明暗のつけ方や、どこにアクセントを持って来るかによって様々な見え方が浮き出てくるものです。作り手の目線が鍵になりますので、出来上がりがとても楽しみです。
ぜひ、たくさんの布を見て触って組み合わせて、自分の好きな物をとことん追求していきましょう。その途中では、自分とほかの人の違いを、興味深くじっくり観察してみましょう。
終わったあとは、新しい扉が開いたような気持ちがするレッスンです。

講師:高野ますみ  プロフィール

レッスン・ワークショップ