大きいキルトを作るに際し.5(番外編)

大きいキルトを作るに際し.1~4を読んで下さった皆様からたくさんメールやお手紙などいろいろいただきまして、書いた本人、正直、ちょっと焦りました。
でも、ほんとに、ありがとうございました。

「共感しながら何度も繰り返し読んだ」
「思い当たることばかりで、パソコンに向かってうん、うんと頷いてしまった」
「自分の進む道が、明るく照らされたような気がした」
「迷いが消えて、自分に自信が持てるようになった」
など・・・・・・、いいことばっかり言っていただいて、ほほー?私の文章にそのようなチカラが?
と、すっかり誤解する私。
実際は、ひとりドキドキして、心臓に悪影響を及ぼしておりますが・・・
でも、
この機会を通して、みんなどんな気持ちで物作りしているか知ることが出来て、 思いがけず、貴重な経験になりました。
「始めたばかりなのですが」、「長年自己流で続けています」と、みんな、それぞれが、キルト作りが大好き!
つくづく、「好き」に勝るものはないな~、と あたたかく、幸せな気持ちでいっぱいになりました。
反面、
みんな誰にも話さずに、一人で考えたり悩んだりしていることもわかりました。
やっぱり、好きなこと、楽しいこととはいえ、物を作るっていうことは孤独な作業で、常に自分との対峙。
基本的に、みんな自分に厳しいのよね・・・それはもう、気の毒なほど。
どんなに誰かが褒めてくれても、自分自身を満足させるのが一番むずかしくて、自分が満足できるものなんて、そうそう作り上げることは出来ないもの。
もしそんな時が来たら、そのあとは、もう作るものなんてなくなるんだろうね、きっと。
私はまだそんな地点に到達したことは一度もないから、「あーあ」と思いながら、繰り返し繰り返し作る。
しかも私はみんなほど自分に厳しくないから、失敗する自分も結構好き。
その失敗もなかなか大胆で、 何百枚も裁断したあとに、この布とこの布は合わないって気づく、とか
表をぜーんぶ縫い終わったあとに、ボツにすることもよくあるわ、日常。
たいてい、一度ケチがついたものは再度使わないので、小さな直角三角形の布が大量に廃棄になったり
完成にいたらない試作が紙袋の中でしわしわになっていたり。
その処理には困るけど、私は物作りにおける失敗を、あまりクヨクヨ気にしない。
それは、『必要悪』だし、反対に、ダメだって気づけた自分にこそ注目に値する。
失敗したことに気がついた自分、 それは1段ステップアップした成長した自分。
もちろん、同じ失敗を何度も繰り返すけど、そのたびに何かしらの「気付き」がある。
みんな、自分は「違う違う」って思っているかも知れないけど、潜在的な完璧主義の人ってすごく多いの。
何か作ってみたいと、思ってはいるけど、でも 「失敗はしたくない」、「失敗する自分が許せない」のなら、あなたは立派な完璧主義者!
当然、誰だって、別に失敗なんかしないまま、成功に辿り着きたい。
でも
使い古された言葉だけど、「失敗は成功のもと」って、物作りにおいては、やっぱりこの言葉は正しいと思う。
大人になってから物作りを始めるとどうしても知識が先行してしまって、子供の頃ように思いのまま物を作れなくなってしまうのね、残念なことに。
どうしても他人からの評価が気になるし、ああしてはいけないこうしてはいけないという禁止事項に、頭も、感性も、支配されてしまう。
分別のある大人が、一度つけてしまった知識を捨てるのはまず無理で、感性を子供の頃に戻すっていうそんな神業が出来るのが、いわゆる『天才』っていう人。
私は残念ながら天才なんかじゃなく、一般的な凡人なので、仕方がないから常に物を作る環境に自分を置き続けることでカバーするしかなく・・・。
私は、小さい頃から絵を描くことや手で何か作るのが好きで、大学に行ってまで物作りを学んだわけだけど
結局、先生や教授が教えてくれたことは、技術やテクニックなんかじゃなくて
『物を作ることを通して、自分がどんな人間なのか表現しなさい』
っていうことだったのよね・・・。

作ったものには、自分が出る。
大袈裟な言い方だけど、自分の「生きざま」が出るのですよ。
だから自分を磨き続けなければいけないの。
ただ、その途中には、ダメな自分や、失敗する自分も居る。
でも、それが、生きている自分。
息をして、笑ったり、泣いたりしている自分。誰にも、同じ生き方は出来ない。
作るものもそう。 同じものは、誰にも作れない。
同じ材料で、同じデザインで作ったって、布の扱い方や、針目のひとつひとつはみんな違っている。
そこには作り手のセンスや美的感覚、ひいては人生観までもが表れている。
もしそれが自分の理想と違っていたら?
少しでもそこへ近づくように、分析したり、練習したりしていくの。
謙虚に、辛抱強くね。
次はきっと、ちょっぴり、近づいているはず、必ず。
だから、みんなも決して自分を否定しないで、まず自分自身を好きになることからスタートするといいと思うな。

 

今日もみんな手を動かしているかな?
丁寧に、ゆっくりね。
その一針も、自分だから・・・。

 

つづく  次はほんとのホントの最終回

 

 

2012-12-15 | Posted in 読みもの | タグ: Comments Closed 

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